2020/05/07

エスよりアイをこめて~わたしたちのこれから~

小学生の頃、盆と正月に映画「男はつらいよ」を観にいくことが母との恒例であった。

 

通称“寅さん”はそのころ年2回公開されていた。
盆も正月もとにかく満員の映画館で観ることは私の大変な楽しみであった。
映画の面白さと同時に観客の面白さが私にはたまらなかった。

 

今では信じられないが、

スクリーンにタイトルが現れ、おなじみの音楽が流れると、映画館にいる観客すべてが拍手をした。

同時に「待ってました!!」「日本一!!」といった掛け声もかかる。

 

観客全員がある種の一体感を持って、笑い、ほろっと泣きして最後まで観る。
「終」の文字が出ると、再び拍手喝采。

 

今でも特に印象に残っているのが、作業着を着た男性がスクリーンに向かって
「寅さん、ありがとよ!また会おうな!」と声をかけ、去っていったこと。

 

寅さんが高度成長期の大人達を支えていたのだと、今にして思う。
そして、満員の映画館に集まっているすべての人が踏ん張りながら生きていて
そのことを共有しあうことでさらに元気をもらっていたのだと思う。

 

 

時は流れ、

母と一緒に映画館にいくことがなくなった中学生の私はMTVという番組に夢中になった。

 

その第1回放送の第1曲目が「ラジオスターの悲劇」であることは有名な話だ。

「ビデオがラジオを殺す」というフレーズがキャッチーな映像と音楽で語られていた。

 

ミュージックビデオの出来栄えがレコード売り上げに大きく反映され、ラジオからの転換期といわれていた。
しかし今もラジオは生きている。決して殺されてはいない。

 

 

いよいよZoomによるオンラインレッスンが開始となる。

 

スタジオで一緒にレッスンしてきた、あの一体感、連帯感、空気感。
それをどこまで感じることができるのか?答えはこれからにある。

 

今はできなくても、映画館で他の観客たちと一体感を持って映画を観ることは決して消えない。

そう、ラジオが消えないように。

 

なぜなら、

文化とは、私たち、そして先人たちが作り出してきたもので、それが絶えることは歴史的にみてもないからだ。
いよいよ新しい文化をつくり出すときにきた。

Zoomでのオンラインレッスンの新たな可能性を心から楽しみにしたい。

 

フロム エス。